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パーク獅子吼「獅子ワールド館」

パーク獅子吼「獅子ワールド館」

日本では、祭礼行事の厳かな獅子だけでなく、正月を祝う楽しい獅子舞や角兵衛獅子などが見られる。こうした国内外の獅子たちを一堂に集め、大賑わいを生み出す空間の設計が課題であった。

ほとんどの獅子はカラフルで目立ちたがり屋であり、演舞の映像も併設されることから、暗い黒色の空間にスポットライトを用いた演出を基本とした。円形平面と段状断面の空間構成を組み合わせることで、にぎやかさと一体感を演出した。また、大断面の木造構造と勾配屋根、左官仕上げの壁を採用し、獅子たちの出身地のイメージを反映した設計とした。

立地環境への配慮

獅子ワールド館は、山が急斜面から緩斜面に変わる変曲点に位置している。同じ敷地には山頂へ行くゴンドラがあり、隣接地には一雨降ると水量が急増する小さな沢がある。これらの施設と共に同時に改築・改修が行われたが、発注形態が異なる3つの工事を一体的な計画として進めることができたのは幸運であった。

計画にあたっては、土工事を最小限に抑えつつ、既存地形を補強する形で等高線デザインを繰り返し検討し、3つの目的を果たせる最小限の用地を確保した。獅子ワールド館の用地も限られていたが、建築を最大限に羽を伸ばすように配置し、獅子舞文化を含む人間の営みの大きさを表現しようとした。

さらに、雁木や雪囲いを設けて積雪期の歩行空間を確保するとともに、屋根雪処理のための消雪池を設置した。これらの対雪装置は春夏秋にも活用できる楽しい空間を提供し、獅子たちとの交流密度を高めている。

建築表現と地域文化

以上のように、獅子舞文化の集合空間と豪雪山村での立地条件という2つの視点から建築表現を行った。実は、獅子舞テーマミュージアムの企画から現地調査、収集、整理、展示に至る一連の作業も私たち自身で行った。大切な獅子舞具の譲り受けや演舞撮影などを通じて接した各国・各地の文化には、西欧文明や近代主義ではなく、アジアの民俗的要素があふれていた。そのため、建築表現もよりアジア的なものとなった。

その結果、獅子たちも心地よさそうであり、立地する鶴来町も存在感を示しながら馴染んでいると自負している。

石川県白山市
構造 : W+RC造
階数 : 地上2階
延床面積 : 779㎡
用途 : 博物館
受賞歴

中部建築賞(1996)
日本建築学会作品選奨(1998)
石川県デザイン展「石川県知事賞」(1997)

パーク獅子吼「獅子ワールド館」
パーク獅子吼「獅子ワールド館」
パーク獅子吼「獅子ワールド館」
パーク獅子吼「獅子ワールド館」