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金沢工業大学24号館 工学基礎実技センター

金沢工業大学24号館 工学基礎実技センター

「工学基礎実技センター」は、実験、計算機演習、製図などの実技科目を集中させることで、技術者としての基礎力を習得することを目的とした施設である。現代の技術革新は広範囲に、しかも極めて速いスピードで進行しており、さらにボーダレスな技術社会においては、他分野の技術理解も必要とされる。その結果、工学教育の内容はカリキュラムに収まりきらないほど膨張している。このセンターは、その対策の一環として、基礎的かつ横断的な実技習得の場として企画されたものである。
学内の検討委員会によりカリキュラムが組み立てられ、必要な室内空間や設備、器具の仕様が定められ、設計の与件として提示された。しかし、私たちは設計に際し、以下の内容を付加したいと考えた。
ひとつは、建築という実在を通して、学生たちが「技術とは何か」を振り返りながら受講できるような空間を提供することである。たとえば、技術と人間、技術と環境、技術と芸術といった、技術社会の周辺に存在し続けてきたテーマを、建築という場を通して少しでも伝えられることを願った。それは、本校が総合大学ではなく工科系単科大学であることにも起因している。
具体的には、室空間において均質性よりも個別性を重視し、共用空間では技術と対比させられる人間・環境・芸術を意識した空間装置を設けた。ハイテク機構を備えた諸室のイメージからはかけ離れたコンクリート、木材、焼き物といったプリミティブな素材を多用したほか、列柱コロネード、中庭、段状緑化、5階吹き抜けの玄関ホールや階段筒、テラス、ルーバー、花ブロックなどの空間装置を設けたのも、ここに学ぶ学生たちに何らかの語りかけが生まれることを期待してのことである。
さらに、本校のライブラリーセンター所蔵の稀覯書より引用したダ・ヴィンチの人体寸法図を天井レリーフとして取り入れた。そこに示されている○、△、□の基本図形は建築のモチーフとして随所に使われている。このレリーフは建築学科の学生が製作したものであり、学生たちが自らの手で建築を形作る体験も意図している。
技術教育が技術だけに偏ると、近年の工科学生に見られる「モノづくり離れ」のように、魅力や内容が乏しい分野となりかねない。センターの設計には、こうした状況を打破し、技術教育の本質を見つめ直すという願いが込められている。

石川県野々市市
構造 : 鉄筋コンクリート造
規模 : 地上5階
延床面積 : 8,368㎡
用途 : 大学
受賞歴

北陸建築文化賞(1992)

金沢工業大学24号館 工学基礎実技センター
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